それは、春の光が暖かく差し込む、ごく普通の平日の午後のことでした。私はいつものように、ゴミの山の中に座り込んで、スマートフォンの画面をぼんやりと眺めていました。ふと、SNSで流れてきた、ある一枚の写真が目に止まりました。それは、私と同じくらいの年齢の女性が、整ったキッチンで子供と一緒にクッキーを焼いている、なんてことのない写真でした。以前の私なら、「どうせ演出だ」と鼻で笑って見過ごしていたでしょう。でも、その日は違いました。写真に写っている、ピカピカに磨かれたシンクに反射する光が、あまりにも眩しくて、美しくて、私は不意に涙が止まらなくなりました。「私も、あんな風に笑いたかった」。その心の奥底からの叫びが、何年も凍りついていた私の体を動かしました。私は、手元にあったコンビニのレジ袋に、目の前にあったペットボトルを三つ入れました。それが、私の汚部屋主婦からの脱出を決意した瞬間でした。作業は、想像を絶するほど過酷でした。長年放置されたゴミは重く、嫌な臭いを放ち、私の心を何度も折ろうとしました。でも、ゴミ袋が一つ一杯になるたびに、私は自分を褒めました。「よくやった、一歩進んだよ」と。一週間後、キッチンの床が一年ぶりに見えたとき、私は床に頬を寄せて泣きました。冷たいフローリングの感覚が、私が生きていることを教えてくれました。部屋が綺麗になっていくプロセスは、私が私を取り戻していくプロセスそのものでした。まだ、全ての部屋が完璧になったわけではありません。でも、今の私は、明日が来ることを恐れていません。夕食後、ピカピカになったシンクを最後に拭き上げるとき、私は心からの安らぎを感じます。汚部屋主婦だったあの暗い日々は、私に「普通に生きること」の尊さを教えてくれました。再生への道は、まだ始まったばかりですが、私はもう、ゴミの山に逃げ込むことはありません。窓を大きく開けて、新しい風を部屋に入れながら、私は今日を、そして自分自身を、精一杯生きていこうと決めています。