「私たちの仕事は、役所への通報という一本の電話から始まることがほとんどです」と語るのは、ゴミ屋敷の片付けを専門に行う清掃会社の代表である佐藤さんです。佐藤さんは、数多くのゴミ屋敷を再生させてきた現場の証人として、通報がいかに人生を劇的に変えるきっかけになるかを日々実感しています。通報を受けて行政の指導が入り、ようやく住人が片付けに合意した現場。そこに佐藤さんたちが足を踏み入れたとき、最初に目にするのは絶望そのもののような光景です。天井まで積み上がったゴミ、腐敗した食材、そしてその中で震えている住人の姿。佐藤さんによれば、住人の多くは通報されたことに対して当初は怒りを感じていても、片付けが進むにつれて驚くほど穏やかな表情に変わっていくといいます。「ゴミの山は、住人が自分を閉じ込めていた心の檻なんです。私たちがそれを物理的に解体していくことで、住人の心が解放されていくのが分かります」と佐藤さんは言います。作業の過程で、ゴミの下から何年も前の家族写真や、大切にしていた趣味の道具、あるいは現金が見つかることもあります。それらを丁寧に住人に手渡すたびに、住人は自分がかつて持っていた「生活の輝き」を思い出し、涙を流すことも珍しくありません。佐藤さんが強調するのは、通報があったからこそ、プロの私たちがここに来られたという事実です。通報がなければ、住人はゴミの中で孤独死を迎え、誰にも気づかれずに一生を終えていたかもしれません。清掃業者の視点から見れば、通報は住人にとっての「人生の強制終了」ではなく「リブート(再起動)」なのです。作業が終わった後の真っ白になった部屋に、数年ぶりに日光が差し込む瞬間、佐藤さんは通報してくれた近隣住民の勇気に心から感謝するといいます。その一本の電話が、自分たち清掃員と住人を結びつけ、一つの絶望を希望へと変える物語を紡ぎ出したからです。ゴミ屋敷の清掃は、汚れを落とすだけでなく、住人の尊厳を取り戻す聖なる儀式でもあります。その儀式を始めるための最初のスイッチは、近隣住民の皆さんが持っている通報という名の勇気なのです。業者はその勇気を受け継ぎ、住人の新しい人生の舞台を整えるために全力を尽くします。