ゴミ屋敷を作り上げ、さらにそこに野良猫を集めてしまう行動の裏には、深刻な精神医学的問題が潜んでいるということが少なくありません。専門用語で「ホーディング」と呼ばれる溜め込み症や、自分の身の回りの世話を放棄してしまう「セルフネグレクト」などは、その代表的な例です。特に、動物に対する過度な依存が加わった状態は「アニマル・ホーディング」と呼ばれ、非常に複雑な心理背景を持っています。住人本人は、ゴミを溜めている自覚がなく、むしろ「いつか使う大切な物」と考えています。同様に、野良猫への餌付けも「命を救う崇高な行為」と認識しており、第三者が環境の悪化や猫の健康状態の悪さを指摘しても、それを自分への攻撃や猫への虐待だと捉えてしまうのです。彼らにとって、ゴミの山は外部の厳しい社会から自分を守る障壁であり、猫たちは自分を裏切らない唯一の味方です。社会的な孤立、家族との死別、仕事での挫折といった大きなストレスが引き金となり、心の中に空いた大きな穴を、物と動物で埋めようとします。しかし、管理能力を超えて収集を続けることで、結果的に自分自身も動物も苦しめるという矛盾に陥ります。このような状態にある人に対し、力ずくでゴミを捨てさせたり猫を取り上げたりすることは、精神的な崩壊を招く恐れがあります。必要なのは、まず本人の孤独に寄り添うメンタルケアです。ゴミ屋敷と野良猫の問題を解決するためには、精神科医やカウンセラー、社会福祉士といった専門家が介入し、本人が抱える不安や執着の根源を探らなければなりません。住環境の改善は、本人の心が回復の兆しを見せて初めて、持続的な意味を持ちます。ゴミと猫を「排除すべき対象」として見るのではなく、住人の「心の叫び」の象徴として理解することが、解決に向けた人道的なアプローチの第一歩となります。この問題は、単なる環境問題ではなく、現代社会が抱える孤独という病理の一形態なのです。
ゴミ屋敷と野良猫に依存してしまう心の病とセルフネグレクト