医学的な見地から申し上げますと、ゴミ屋敷の環境は「免疫力の消耗戦」の場であると言わざるを得ません。多くの患者さんを診察してきましたが、住環境が不衛生な方は、共通して免疫の指標が低い傾向にあります。具体的には、慢性的なアレルギー反応によってIgE抗体値が常に高く、それによってT細胞やB細胞といった獲得免疫の働きが阻害されているケースが多く見受けられます。ゴミ屋敷に蔓延する真菌、特にアスペルギルスなどは、吸い込むことで肺の深部にまで到達し、慢性的な炎症を引き起こします。炎症が続いている状態では、体内の免疫リソースが常に消費され続け、新しい外敵に対する予備力が低下します。これを「免疫の老化」が加速している状態と呼んでも差し支えないでしょう。また、害虫やネズミの糞尿に含まれる病原体は、接触感染や空気感染のリスクを高めるだけでなく、それに対する抗体を作るために身体は多大なエネルギーを必要とします。不衛生な環境では、善玉菌と悪玉菌のバランスも崩れやすくなります。腸内環境は免疫力の七割を司ると言われていますが、ゴミ屋敷での不規則かつ不衛生な食生活は、腸内フローラを破壊し、免疫機能の根幹を揺るがします。さらに、睡眠の質も重要です。ゴミに囲まれた不安定な場所での睡眠は、脳を深く休ませることができず、免疫細胞の修復や増殖を妨げます。私が患者さんにまずお伝えするのは、治療と同じくらい、あるいはそれ以上に「環境の改善」が重要であるということです。どんなに優れた抗生物質やワクチンも、その基盤となる本人の免疫力が破綻していては、十分な効果を発揮できません。住空間を整え、清潔な空気を維持することは、免疫機能を正常に保つための最低条件です。特に高齢者の場合、ゴミ屋敷による免疫力低下は、誤嚥性肺炎や敗血症といった命に関わる疾患を誘発する直接的な原因となります。物理的な整理整頓は、単なるマナーや見た目の問題ではなく、あなたの命を守るための「環境医学」としての側面を持っていることを、強く認識していただきたいのです。
医師が警告する不衛生な住空間と免疫力の低下