ゴミ屋敷という環境は、単に不衛生であるだけでなく、防災の観点から見れば極めて危険な「燃料の集積地」であると言わざるを得ません。特に屋外にまで不用品が溢れ出している状態は、悪意を持った第三者による放火の格好の標的となります。ゴミ屋敷における放火の恐ろしさは、火災が発生した後の燃焼速度とその規模にあります。積み上げられた段ボールやプラスチック、古布などは、一度火がつけば爆発的な勢いで燃え上がり、通常の住宅火災とは比較にならないほどの熱量を放出します。これは、ゴミの山によって空気の通り道が複雑に入り組み、煙突効果のような現象が起きることで、内部から一気に火が回るためです。また、ゴミ屋敷の内部では長年の埃や油汚れが堆積しており、これらが火に加勢することで、消火器による初期消火をほぼ不可能にします。消防隊が駆けつけた際も、山積みのゴミが障壁となり、屋内への進入が困難であることに加え、放水した水がゴミに吸収されてしまい、深部でくすぶり続ける火種を鎮火させるまでに膨大な時間を要します。さらに深刻なのは、隣家への延焼リスクです。ゴミ屋敷から発生する猛烈な輻射熱は、数メートル離れた住宅の外壁や窓ガラスを容易に破壊し、延焼を招きます。周囲の住民にとっては、いつ火をつけられるか分からないという精神的なストレスも甚大であり、ゴミ屋敷の放置は地域全体の安全を脅かす社会的な問題です。放火を防ぐためには、まず屋外に可燃物を置かないという原則を徹底しなければなりませんが、自力での解決が困難なゴミ屋敷主に対しては、行政による強制的な撤去を含む早期の介入が、悲惨な火災を未然に防ぐ唯一の手段となります。火災が起きてからでは遅すぎます。私は数年前まで、誰にも見せられないようなゴミ屋敷に住んでいました。仕事での挫折をきっかけに、外の世界を拒絶するように物を溜め込み、気づけば玄関の扉も満足に開かない状態になっていたのです。そんな私の人生を激変させたのは、ある夜、庭先に置かれたゴミ袋から火が出たボヤ事件でした。幸い、通りかかった人がすぐに気づいて消火してくれましたが、黒く焦げたゴミの山を見たとき、私は全身の血が凍るような思いがしました。ゴミの山という燃料を排除することこそが、地域を放火の脅威から守るための最も実効性のある防火対策なのです。