私は特殊清掃のプロとして、これまで数百件に及ぶ汚部屋の片付けに携わってきましたが、その中でも主婦の方が住む部屋には、他とは異なる独特の悲哀が漂っていることが少なくありません。独身男性の汚部屋がコンビニゴミや趣味の物で埋め尽くされているのに対し、汚部屋主婦の現場で目につくのは、大量の未開封の育児用品、期限切れの食材、そして子供の成長を記録しようとして挫折した跡のような、膨大な数の写真やビデオカメラです。彼女たちは、家族のために良かれと思って買った物を、結局使いこなせないまま溜め込んでしまいます。また、キッチン周りの惨状は、彼女たちが最後まで「食事を作らなければならない」という主婦としての責任感と戦い、そして敗れた戦場のように見えます。シンクには何層にも重なった洗い物があり、冷蔵庫の中には化石化した食材が詰まっています。そして、何よりも印象的なのは、部屋の片隅に、家族には見せないように隠された、酒の空き瓶や大量の睡眠薬のシートが見つかることです。汚部屋主婦の多くは、この環境を誰にも言えず、アルコールや薬物に依存することで、目の前の現実を直視することを避けています。私たちが作業をしている間、住人の主婦の方は、端の方で小さくなって、申し訳なさそうに、あるいは全てを諦めたような表情で私たちの作業を見守っています。ある方は、部屋が綺麗になっていくにつれて、「私はもう一度、このキッチンで子供に味噌汁を作れるでしょうか」と震える声で尋ねてきました。その言葉には、失ってしまった日常への強い渇望が込められていました。汚部屋清掃の仕事は、単にゴミを運び出すことではありません。ゴミの下に埋もれてしまった、その人の尊厳と、家族としての機能を取り戻すためのレスキュー作業なのです。物理的なゴミを取り除いた後、ガランとした部屋に差し込む日光を見たとき、住人の方が流す涙。それは、長年自分を閉じ込めてきた檻から解放された瞬間の涙であると、私は確信しています。