日本が直面している「多死社会」と「超高齢社会」は、ゴミ屋敷の数と密接に関連しています。人口動態統計と自治体の調査結果を照らし合わせると、ゴミ屋敷の発生件数が最も多い年代は、六十代以上の単身世帯であることが分かります。この相関関係は、加齢に伴う身体能力の低下と、社会的な繋がりの喪失が、住環境の維持に決定的なダメージを与えることを示唆しています。長年連れ添った配偶者を失ったり、定年退職によって社会的な役割を失ったりした高齢者が、セルフネグレクトに陥り、身の回りの整理ができなくなるケースは後を絶ちません。また、認知症の初期段階において、物の要不要の判断ができなくなる「実行機能障害」が現れることも、ゴミ屋敷化を加速させる大きな要因です。かつては地域に数多く存在した「お節介な近所付き合い」が消え、核家族化が進んだことで、高齢者の孤立はさらに深刻化しています。一戸建て住宅がまるごとゴミ屋敷化している件数を全国規模で推定すると、空き家問題と相まって、今後さらに爆発的に増加することが予想されます。いわゆる「ゴミ屋敷」と呼ばれる家屋のうち、かなりの割合で高齢者の独居が確認されており、それは同時に孤独死のリスクとも背中合わせの状態にあります。地域で見守るべき対象としての「ゴミ屋敷の数」は、行政の福祉政策における重要な指標となるべきです。しかし、現状ではゴミ屋敷を「環境問題」として捉える部署と、「福祉問題」として捉える部署の間で連携が不十分なケースも少なくありません。ゴミ屋敷の数を減らすことは、高齢者の尊厳を守り、孤立死を未然に防ぐことと同義です。私たちは、増加するゴミ屋敷の数字を、単なる公衆衛生の課題としてではなく、高齢者が安心して最期を迎えられる社会をどう構築するかという、文明論的な問いとして受け止める必要があります。行政がゴミを撤去した後に、再びゴミが溜まり始める「リバウンド」の数が多いことも、本質的な支援が不足していることの表れです。住人の心に寄り添い、再び誰かと繋がりたいと思えるような環境作りこそが、高齢化社会におけるゴミ屋敷対策の根幹とならなければなりません。